循環システム工学科パネルディスカッション2002

21世紀循環型社会をめざしてー自然と共に生きるー



 2002年11月30日,山梨県立文学館講堂において,山梨大学工学部循環システム工学科主催のパネルディスカッション「21世紀循環型社会をめざしてー自然と共に生きるー」が行われました.
 5年前の発足以来,循環システム工学科が主催してきたシンポジウム・パネルディスカッション,今年は自然環境を対象として,私たちは自然とどのように向き合うべきなのかを考えてみました.
 パネリストからは以下の要旨が出され,個別のプレゼンテーションの後にコーディネーターを加えて「自然」についてさまざまな議論がなされました.

 会場から出された質問のいくつかにお答えしました
 (植原さんへの質問の回答はこちら<NEW!

また,参加者へのアンケート結果(Excel fileです)や,聴講した本学科1年生のレポートもご覧下さい.


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自然観察からはじまる自然保護


植原 彰(うえはら あきら) ノラやまなし(自然観察指導員山梨県連絡会)事務局長,乙女高原ファンクラブ代表世話人


 身近な地域の自然,観てますか・・・? 地域の自然をしっかり観るとは,どういうことなのか? しっかり観たら,どうなったか? 県内の事例を紹介します。

 自分の地域の自然を次の世代の子どもたちにしっかり手渡すことは,今,ここに 生きている私たちの責務だと思っています。そのためには,まず地域の自然をちゃんと観ること。じっと観る,続けて観る,採らないで観る,五感を使って観る,マクロに観る,自然のしくみを観る,人と自然との関わりを観る・・・といった「自然の観方(みかた)」を続けていけば,自然の特徴が見えてきます。どうしたら大切にできるか,どうしたらよりよくできるかも分 かってくるでしょう。そうしたら,自然を大切にしたいという仲間を増やすためにも,将来この自然をバトンタッチする担い手である子どもたちに地域の自然を知ってもらうためにも,自然観察会を開催しましょう。地域の自然を観察していると,「問題」にぶつかってしまうこともあります。そんなときに,見逃さず,見て見ぬふりをせず,きちんと対応することも大事です。おかしいと思ったことは「おかしい」と声に出して言うことです。


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多様な自然、多様なひと


北沢 克巳(きたざわ かつみ) 環境省生物多様性センター


 自然と共に生きていくために、何をすべきなのか、何ができるのか。まずは我々人間同士で共に考えてみませんか。

 自然と共に生きていくためには、自然のことをよく知り、学びつつ(本当は自然の中でよく遊び)、人と自然との関係を一人一人が考え、身に付けていくことが大切だと考えています。その一助ともなるように、環境省生物多様性センターでは、自然環境データを継続的に収集・整理し、標本資料の保管も行いながら、これらの自然情報の提供や普及啓発等の活動に取り組んでいます。これらの活動の必要性は、今年3月にまとめられた「新・生物多様性国家戦略」にも、自然と共生する社会を構築するための3つの目標(種・生態系の保全、絶滅の防止と回復、持続可能な利用)の達成に向けた基本的視点の中などに、科学的認識、知識の共有・参加等として示されています。

 このような国での取り組みを紹介しつつ、自然と共に生きていくために何をすべきなのか、何ができるのか、一緒に考えたいと思います。


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生きているとは


横濱康継(よこはま やすつぐ) 宮城県志津川町自然環境活用センター


 すべての生物は植物の光合成から始まるエネルギーの流れとこれに連動する物質循環によってエネルギーと物質を供給されて生きています。ヒトもその例外ではなく、その意味で「自然と共に生きている」と言えるでしょう。

 「自分は何のために生きているのだろう」と、誰でも一度は思いますが、その答は得られないまま一生を過ごしてしまいます。この疑問には答が存在しない、つまり人生には目的などないからなのですが、「自分はなぜ生きているのだろう」という疑問なら、「生きる性質を持った生物だから」という明快な答があります。

 「自然と共に生きる」とは、昆虫や魚あるいは草や木などと同じように生物として生きているということを認識することなのでしょう。ヒトもエネルギーと多様な物質を摂取しなければ生きられません。地球上のすべての生物は、太陽光を取り込む植物の光合成から始まるエネルギーの流れとこれに連動する物質の循環によって、エネルギーと物質を供給されているのですが、人類も例外ではありません。さまざまな環境問題に直面している今こそ、私たちは連動する「流れ」と「循環」の中に生きていることを認識すべきでしょう。



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御園生 拓(みそのう たく) 山梨大学工学部循環システム工学科 <コーディネーター>


 私たち人類は,環境や自然を保護し,自然と共に生きて行かなければならないと言われます.しかし,「自然と共に」という語によって,私たちは私たち人類を自然から切り離しているのではないでしょうか.ここで言う「自然」や「環境」とはそもそも何を意味しているでしょう.これらの言葉の意味を謙虚に考え直すことにより,持続型社会の実現に向けた,私たちのあるべき姿・とるべき行動が見えてくるのではないかと考えます.

 市民レベルのさまざまな自然保護活動を展開されている植原ノラやまなし(自然観察指導員山梨県連絡会)事務局長・乙女高原ファンクラブ代表世話人,国の自然保護政策の最前線に立っておられる北沢環境省生物多様性センター長および,専門の生態学の立場から社会に対する活動を積極的に続けられている横濱宮城県志津川町自然環境活用センター長をパネリストにお迎えし,私たちは自然とどのように向き合うべきなのかを考えていきたいと思います.

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